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カラオケの王様 天国から地獄へ 

この日の朝、私の目覚めはいつになく悪かった。こんな些細な出来事が、その夜に起こる最悪の事態を告げる予兆であることなど全く知ることも無かった。私はその土曜日の夜の午後11時までは確かに『カラオケの王様』であったし、自称『カラオケの王様』ではあったが、皆もそれを催眠術にかかったように信じ、疑う者など誰もいなかったのは紛れもない事実であろう。カラオケの精密採点のスコアは常に90点台。下総台地に根を生やし君臨していたのだから。

前回のブログで、私はライブハウス『一休』にあるカラオケの精密採点で90点を叩き出し、ボトル一本を勝ち取ったことを書いた。そのブログを見た商売上手だが床下手な『S惑星』のヘロママは、95点以上でボトル一本サービス・77点でカラオケ券5枚というなんとも画期的なサービスを考え出した。歌の上手い我々だけではなく、私のゴルフの師匠しんちゃん先生のような平均点が低い人々にも喜んでもらえる機会の平等・博愛に満ちあふれたものである。

『酒楽カラオケ部』は『酒楽』で授業が終わり放課後になるとカラオケ・グラウンドのある『S惑星』に移動する。監督やコーチなどはいない自主練習が常である。体調が悪く歌いたくない日には、突如、ヘロママが鬼コーチへ変貌し「歌え~!」とケツバットならぬケツマイクの体罰を振るう。このお陰で私やメイメイさんの歌唱力は進歩したと言っても過言でなかろう。しんちゃんはマイナスに作用してしまったが・・・。そして部外からはヒルズくんも参加。

私、メイメイさん、ヒルズ君の3人が『S惑星』で常に90点以上を叩き出す。94点台を叩き出せるのはこの3人しかいない。そして私といえば自他共に認めるまさに『カラオケの王様』。そうそう、私が王様の座を追われる一時間前にも嫌なことがあったことを思い出した。同級生である低忠氏が続け様に90点、92点と90点台を叩き出した。私はそれまで低忠氏の歌唱力はしんちゃんの少し上位であると考えていたし、きっと皆もそう思っていたに違いない。

低忠氏の実力は私達のグループには入れてはあげられないが、少し近いところのグループであったことに驚いた。そのような変な出来事を経て、私が王様から転落する瞬間は徐々に迫ってきた。唐突にメイメイさんがカウンター席から立ち上がり、本人もヘロママもステージと思い込んでいるスペースに立った。そしてイントロが聞こえてきた。坂本冬美の『君の股に恋してる』、否、『また君に恋している』だ。急激にS惑星全体の空気がヌルヌルと湿ってきた。

メイメイさんは米良調の高いキーで切々と歌い込んでいった。そして歌い上げた。精密採点が始まり誰もが固唾を飲んで結果を待った。『95.228』(←だったような?)。S惑星では前人未到のスコア。コンマ以下は定かではないが、95点を超えたことだけは確かであった。私は嬉しかった。燦然と光り輝く私の王冠をメイメイさんの頭に被せた。私は全く素直な気持ちで王冠を手渡したのだった。その刹那、メイメイさんがこう言った。「良きに計らえ!」と。

ええっ~、『殿様』?『カラオケの殿様』?つい最近まで酒楽城に君臨する殿様であった後森君を流刑に処し、沖縄へ島流しにしたばかりであったのに・・・。第二の殿様が早くも誕生してしまった。私の怒りは愛液のように止めど無く溢れ出した。王様の座から降りた今、この地域の平和を取り戻すために私はどのようなポジションにあるべきか?そ、そうか!殿様の悪政から庶民を守り、その政権を転覆させる『カラオケのテロリスト』になるしかない!頑張ろう~。
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